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あらゆるタイプのベランダに対応可能!!

伸縮型オ−ルバンド Vダイポ−ルアンテナの製作

1994年7月号CQ誌掲載記事

JA3NEP 
小曽根真三 

1.はじめに

外国に興味のあるアマチュア無線家にとって一度は海外から無線を運用してみたいと思ったことがあるのではないでしょうか。私も海外から運用し、パイルアップを受けてみたいものだと長年夢を暖めていました。

この度、米国と日本の総合運用協定によりFCC(米国連邦通信委員)からアマチュア無線の運用ライセンスを得たのを機会にアラスカおよびハワイから運用するため、運搬が容易でホテルのベランダなどに設置が簡単なオ−ルバンド伸縮型Vダイポ−ルアンテナを試作しました。

敷地の狭い日本、大きなアンテナを建てたくても物理的に無理のある無線愛好家、アパ−トやマンションからスパイやゲリラもどきに無線を楽しんで居られる局長さんに少しでもお役にたてればと思い簡単にアンテナを紹介いたします。

 

     
  アラスカチェナホットスプリングスのホテル前より

2.運用周波数帯

運用周波数を7MHZ、10MHZ、14MHZ、18MHZ、21MHZ、24MHZ、28MHZ帯とし、ロッドアンテナ2本をVの字に組み合わせ、アンテナチュ−ナ−と共に1つの筐体に組み立てたてました。(アンテナチュ−ナ−のコイルを増すことにより3.5MHZも運用可能です)
 

3.アンテナの構成 

 ランチボックス内に組み込んだアンテナチュ−ナ−に50MHZ用ロッドアンテナ(アンテン製、GNR−60エレメント1本1800円)2本を直角に配し、チュ−ナ−のバリコンにモ−タ−(ジャンク屋から1ケ700円で購入)を取り付け、シャックからリモコン可能なアンテナシステムとしました。

バリコンを調整することにより目的の周波数において、SWR=1(反射無し)まで追い込むことができます。また7MHZや10MHZ帯は少しでも効率を上げるためアンテナの先端に空芯コイルを取り付けました(1.2mmΦのエナメル線で直径35mmΦの空芯コイル15回)。
 
 
 マウイ島のケアラニホテルでVDIPアンテナとTS−50Sを持つ筆


4.アンテナチュ−ナ−の構成

 
 図2の様にチュ−ナ−の回路そのものは非常に簡単です。ランチボックス(800円で購入)内にバリコン(250P 1KV 2500円で購入)を2式、空芯コイル、同軸コネクタ−、タ−ミナルなどを図3の様に配置し、できるだけ太い線か銅板で配線する。私は銅板で配線しました。細い線で配線すると21MHZなどの高い周波数ではリアクタンスを持ち影響がでます。

コイルの切り替えはワニグチクリップが一番FBです。もちろん接点数の多い切り替えSWでコイルを切り替えるのも悪くありません。
タイト製の切り替えSWが手に入りにくいのと高価なためワニグチクリップとした次第です(hi)。

また図1の様にランチボックスの底部分を厚さ2mmのアクリル板で補強しアンテナエレメント、固定用Uボルトを取り付けます。

 
 アンテナチューナー、ワニグチクリップでコイルを挟む
 

 
アンテナチューナーと釣り竿を利用したアンテナシステム 
5.コイルの製作
 直径18mmφの水道用エンビ管に図4の様に直径40mmφの空芯コイルを27タ−ン(だいたいでよい)取りつけます。コイルを取り付ける要領は、2mmφのスズメッキ線を直径40mmφの缶(何でも良い)に27回密巻にして取り外します。

エンビ管に取りつける際に、コイルを引き延ばして、エンビ管に取りつけたコイル固定用の圧着端子(1mmφのスズメッキ線を取り付けてある)にハンダずけしてコイルを固定します。また1.9MHZ帯用に25mmφのエンビ管に1.6mmφのエナメル線を35回密巻にしたコイルをケ−ス内に増設しました)

自宅では屋根馬からシャックの窓際まで全長30m位のル−プアンテナ
を作り、このチュ−ナ−と共に1.9MHZ〜10MHZまで運用しています。

6.アンテナおよびチュ−ナ−の調整

ロッドアンテナの最大エレメント長は3mです。21MHZでは50cmずつ不足するので空芯コイルを接続し、アンテナチュ−ナ−のコイルをトップから数タ−ン(4〜5タ−ン)の所にワニグチクリップで固定し、受信感度が最良になるようにバリコンを調整します。

10W位で送信しSWRが1になるようにバリコンを微調整します。
SWRが1にならない場合はコイルのタ−ン数やエレメント長を変えて、再度バリコンを微調整して下さい。7MHZ、10MHZ、14MHZ帯も同様にコイルの適当な所をワニグチクリップで固定し、バリコンを調整します(7MHZでは27タ−ン)。

バンドの真ん中でSWRを1に調整すれば、バンド内はSWR=1.5位で運用できると思います。28MHZ帯はロッドアンテナのエレメントを1m位ずつ短縮します。

要領がわかればコイルやアンテナエレメント長は簡単につかめるでしょう。
バリコンを回して受信感度が変わらなければコイルの固定位置が不適当です。
受信感度が最良になるようにコイルおよびバリコンを調整できればSWR=1まで簡単に調整可能です。そして50W、100Wと増力してもSWRはほとんど変化しないと思います。

 
 ホテルのバルコニーでCW交信する筆者
 7.同軸ケ−ブル
 
 ペディションでは同軸ケ−ブルを2本を用意しました(3mと7m)。アンテナを調整する前に同軸ケ−ブルの開放端インピ−ダンスを測定
したほうが良いと思います。

開放端インピ−ダンスが0オ−ムに近い場合、調整がクリチカルになり大変不安定です(無限大に近いほうが良いでしょう)。

インピ−ダンス測定器の無い方は数m単位の同軸ケ−ブルを数本用意し、調整がクリチカルでマッチングが取りにくい場合、ケ−ブルの長さを変えたほうが良いと思います。

同軸ケ−ブルもアンテナの一部です。アンテナエレメントと同様に注意深く扱いましょう。


8.運用してみて 

 

ハワイ州マウイ島からKH6/JA3NEPのコ−ルサインで14MHZ、18MHZ、21MHZ、24MHZ帯で沢山の局と交信できました。JAの局はもちんのこと、VK、ZL、UA、ZP、ZSの局とコンタクトでき、大変感激しまた。

JAまで59プラスのシグナルレポ−トを頂いた時には感激というより驚きでした。その他VK、ZLなどの局から良いレポ−トを頂き、このアンテナの試作は大成功だったと『にまにま』しているところです。
最初はアラスカ州フェアバンクスの温泉町チェナホットスプリングスから運用しました。

なにせ−30〜−40度という厳寒地、アンテナをベランダに出していたところバリコンを回すモ−タ−はカチンコチンに凍り、モ−タ−は回転しませんでした。
慌てて、室内に移し、ヘヤ−ドライヤ−で暖め、やっと回転するようになりました。アンテナを室内の窓際にセットし直し交信を待ちましたが山に囲まれたロケ−ションであったため、辛うじて、7MHZ、14MHZ帯でJAなどの局が聞こえていました。

空電ノイズが少ないため、信号が弱いにもかかわらず明瞭に交信内容が聞こえました。

KL7/JA3NEPとCQをだしていたところVE7DUBからコ−ルがあり59のレポ−トを頂き感激しました。
でも後にも先にもアラスカではVEの1局だけでした。

 
   
アンテナを外に設置したところモーターは凍りついてしまった
 

   
 マイナス40度にもなるためアンテナを部屋に設置し運用
 

9.トラブル

 
 自宅の実験ではトラブルは無かったのですが、米国でいざシャックを組み立てエレキ−(BILL・LAB製小型エレキ−)を接続し、電力を10Wから50Wに増力したところ、高周波が回り込み送信しっぱなしになりました。

日本のAC(商用)電源は短い間隔(電柱から電柱)でトランスが入っているので電源インピ−ダンスが低く、米国では日本と比較してインピ−ダンスが高いと想像できます。エレキ−の電源を無線機の電源から供給していたため高周波が回り込んだ様です。

自作のコモンフィルタ−を持参していたのでコア−を取り外し、エレキ−の電源入力、TS−50Sのキ−入力に挿入し解決しました。何でも持って行くものです。
 

10.最後に

 

アラスカやマウイ島ではたくさんの局が7MHZ帯でオンエアし、混信していると想像していましたが、ほとんど交信は聞かれませんでした。

マウイ島では14MHZから24MHZ帯まで沢山の局長さんと交信でき、いまだに感激は消えていません。

失礼な交信態度にならない様に努めましたがもし失礼がありましたらご容赦下さい。

 
 昔アラブの王様が利用したと言われている日よけの為のカバナ
 
 筆者が良く宿泊するマウイのリゾートホテル。見晴らしが実に美しい。
 
アラスカではほとんど交信できませんでしたがオ−ロラ(アラスカではノ−ザンライツ、北の光と呼んでいる)が美しく、十分満足のいく旅でした。

このアンテナを試作するまでに色々なアンテナを実験しましたがVダイポ−ルアンテナは比較的持ち運びが容易で、オ−ルバンド対応と十分満足いく結果であったと自負致しております。
 
   
 アラスカの雪景色は壮大で夜になるとオーロラが幻想的だ  犬ソリに乗っている筆者
 
アパマンハムの局長さんや海外から運用したいと考えて居られる無線愛好家に少しでもお役に立てれば幸いです。お空でアンテナ談義が出来る日を楽しみに致しております。
ではFBDX73!! 

参考文献 


W1FB DOUG DEMAW氏 HOW TO BUILD A SMALL ATU FOR CAMPERS(USA CQ詩)
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