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移動/固定用160mバンド            垂直アンテナの製作

ホテルのベランダから160mバンドQRPを楽しもう!!

超小型160mバンド垂直アンテナの製作。

アンテナの調整が容易なバリLも製作しよう。 

DE JA3NEPWH2J
小曽根 真三

2011年3月号 CQ誌
別冊掲載記事

始めに

アマチュア無線の醍醐味の1つ、160mバンドの運用に興味をお持ちのアマチュア無線家は多いと思います。でもネックはアンテナ、1/2ラムダで80m長の大きなアンテナが必要で、やむなく諦められておられる局長さんが多い事と思います。

私は旅行先のホテルや自転車に乗って時々7MHzや10MHz帯の運用をしていますが、かねてから160mバンドのアンテナをホテルのベランダに設置し、かつQRPで運用出来ないかと考えておりました。試行錯誤を重ねながらなんとか5mの釣り竿を利用し、大胆にもQRPで運用できるアンテナを製作しましたのでここに紹介致します。

トップバンドに興味をお持ちのHamの仲間に少しでもお役に立てれば幸いです。
 

アンテナの構成

 
5mの釣り竿のトップに空芯コイルと頂冠を設置し、3.3mの同軸ケーブルをアンテナ線として下部まで這わせ、固定コイルと共振周波数の微調整用にバリLを設置、40m長のビニール線2本をベランダの大きさに合わせて何度も折り曲げカウンターポイズ(CP)として使用します。給電インピーダンスのマッチングをとるために自作の小型アンテナチューナーを入れます。
 
アンテナの系統図
 
 
 
   
  1.9MHz帯 空芯コイル  7/10MHz帯空芯コイル 
   
   
   
固定コイル、バリLとATチューナー  カウンターポイズ(奥に見える) 
   
   



トップコイルと釣り竿



固定ボトムコイルの製作

円形のプラスチックケース(私は液肥の入れ物を使用、なんでも良い)の上にダンボール紙を巻き、その上に自在ブッシュをビニールテープで固定し、錫メッキ線を図の様に巻いていきます。巻き終わると自在ブッシュの上にエポキシ系接着剤でコイルを固め、乾燥後コイルを抜きとります。最後にダンボール紙を取り除けば立派な空芯コイルの出来上がりです。

 
 
 空芯コイルの製作過程、2mmφの鈴メッキ線で巻くと結構頑丈なコイルが出来る
 

ケースに収めた固定コイル

 

バリLの作り方


バリLは日本で適当な代物が販売されておらず、やむなくコイルを延び縮みさせてインダクタンスを連続で可変させる簡単な構造のバリLを製作しました。

材料はエナメル線、3CFVFコネクター、長いボルトとナット(ホームセンターで購入)、コイル収納ケース(スーパーマーケットで購入)、インシュロック等を準備、ようはバネ状になったコイルを伸び縮みさせる事が出来ればどんな形状でもOKです。

1.5mmΦから2mmΦのエナメル線を紙の筒の上に5〜10ターン程密巻しバネ状のコイルを製作します。プラスチックケースに長いナットを接着剤で固定しボルトを挿入します。これでボルトを回してコイルの長さ(インダクタンス)が連続調整できます。

ボルトの端っこに3CFV用コネクターを接着剤で固定し、コネクターのもう一方をコイルに固定します。コイルの一方をプラスチックに固定し、もう一方のコイルの両端をインシュロックで固定してインシュロックの真ん中をネジで引っ張ったり、縮めたりしてコイルのインダクタンスを連続可変させます。

 
 
 
3CFV同軸Fコネクター  長手ボルトとナット 
 
 
 

バネ状のコイル 伸び縮みさせる

ケースの底に長手ナットを固定
   
   
   
 ケース全体概観

Fコネクターにボルトを接着

   
   
 

コイル最下部の中心からコネクターとボルトを利用してコイルを伸び縮みさせる

   
   
   
伸ばした時のコイル
(小インダクタンス)
 
縮めた時のコイル
(大インダクタンス)
 
   
   
   

160mバンド用バリL
炭酸水のボトルを利用

実際ベランダに設置したバリL 

   
   
 160m/40mバンドのトップコイルと頂冠の製作 
 
紙やプラスチックのボビンにダンボール紙を巻き、その上にエナメル線を120回程(現物は123回)密巻きし密巻きコイルの下に疎巻きコイルを30回程(現物は28回)巻きます。コイルを固定するためにエポキシ系接着剤で固めた後、コイルを引き抜きダンボール紙を取り除くと完成です。(直径65mmΦのコイルになりました)

アンテナエレメントに直接大きい密巻きコイルを設置するより疎巻きコイルから密巻きコイルにすると電波が乗りやすいと経験的に思っています。

密巻きコイルの上にペットボトルの底を接着剤で固定して、底の真ん中に釣竿が通る様にドリルで穴を開けます。疎巻き空芯コイルの下にインシュロックを固定して釣り竿に通したコイルがぶらぶらしないようにビニールテープで固定します。

ホームセンターで打ち抜きアルミ板を購入して密巻きコイルに取り付けたペットボトルの底に固定します。この頂冠は風でアンテナが揺れた時インピーダンスが変化しません。(アンテナの共振周波数の変動が少なくなる効果があり、打ち上げ角も少し位低くなると思っています)

   
   
 打ち抜きアルミ 頂冠

160mバンド用空芯コイル、他バンド用にタップもある 

   
   
   
 40m/30mバンド用空芯コイル  釣り竿に固定するインシュロック 
   
   
   
 釣り竿に固定するインシュロック

頂冠とコイル概観

   
 
トップエレメントの製作
 

50cmほどの直径の違う細いアルミパイプを2本つくり細いアルミパイプを太いパイプに挿入して長さを調整できる様にします。

上部エレメントの長さを変化すると共振周波数が大きく変動します。

接合部分にプラスチックのパイプ止め(ホームセンターで購入)で接触不良を無くす。 
 
 細いアルミパイプ2本を上下させる黒いクランプでエレメントを締め付ける 

釣り竿と上部エレメント 

   
   

アンテナチューナーの製作

 
   
   
 SWR計概観

チューナー内部のコイルとバリコン 

   
   
   
 コイルとSWの拡大写真

手前はSWR計内部

   
   
  

MHz用アンテナとバリLとチューナー概観

   

アンテナの設置と調整

 

釣り竿の先端に長さを可変出来るアルミパイプのエレメントを取り付けその下に160mバンド用のコイルを取り付けます。コイルの下端から3.3m長の同軸エレメント(3C2V)を取り付けて下ろします。同軸エレメントの最下部にバリLと固定コイルを設置し、トップエレメントと固定コイルで運用する周波数の真ん中当たり(1.910MHz)にくる様に大体調整して、あとはバリLで微調整します。

トップコイルの巻き数を多くして下の固定コイルを無くす事も可能です。私は現場で応用範囲が広くとれる様に固定コイルも使用しています。

琵琶湖のホテルで運用した時アナライザーでうまくSWR1:1.4位まで追い込めましたが、アンテナとCPの間にアンテナチューナーを挿入してSWR1:1.1まで追い込みます。 
   
   
   
 C2Vアンテナエレメント 40m×2本 
160mバンドカウンターポイズ
 
   
 5m長×2本 
7/10MHz
用カウンターポイズ
アンテナ全体概観
   
   
アンテナチューナーと
7MHzカウンターポイズ
バリLを調整して
SWR
1:1.4まで調整可 
   
   
  

160mバンド固定コイルとカウンターポイズが見える

   
   

アンテナの効率と受信ノイズ 

 

QRPの運用はまず第一にアンテナの効率です。アンテナ本体を使用する周波数で共振させる事が大事です。共振させなくてチューナーでマッチングを取る事が可能ですが効率が悪くなると思います。基本は共振させてからマッチングです。160mバンドの小型アンテナはバンド幅も小さく少し外れるとチューナーをもってしてもマッチングできませんので注意が必要です。

共振させたアンテナは受信ノイズが少ないのに驚かされます。受信ノイズはバンド幅と密接な関係があり、上記短いアンテナは狭帯域のバンドパスフィルターの様な役割もある様に思います。 
   
   

運用実績 

 

2010年の夏沖縄で7MHzと1.9MHz帯で運用しました。7MHz帯では結構パイルアップに近い感じで呼ばれました。QRP運用も人気が高く十分楽しめると実感しました。

1.9MHz帯で九州の局長さんと交信出来ましたが、途中で無線機の電源が故障し残念ながら1局のみの交信に終わりました。

2010年の秋琵琶湖のホテルから7MHz帯で約1時間の運用で北海道を除く10局と交信ができ、1.9MHz帯では約2時間の運用でJA2JA6JA8を除く10局と交信ができ釣り竿アンテナとQRPでホテルからトップバンドを楽しめる事が実証でき嬉しく思いました。

XYLとの妥協で短い運用になりましたが旅行はあくまで観光が主目的で無線は従になるのは当然と思います。XYLと良好な関係を保ちつつ、細く長く運用するのも無線の醍醐味です。Hi 

 
   
システム概要  FT-817とキーパドル  SSBの運用風景
   
   
  
 CWの運用風景 
   
   

最後に 

 

自宅では1.8MHz帯から10MHz帯まで同じ考えで運用しています。

10mのグラスファイバーロッドを2階建ての屋上に設置しロッドのテッペンに大き目の頂冠(ステンレス線を利用)を設置、エレメントを屋上まで下ろしCPとエレメントの間にバリLを設置し、バナナチップでバンドを切り替え、7MHz、10MHz(バリコンを入れてエレメントを短縮)の2バンドのアンテナシステムとしています。

160mと80mバンドはさらに地上まで下ろし合計エレメント長を17mとして固定コイル、バリLとアース間でアンテナを共振させます。80mバンドと160mバンドは近くのNHKラジオ等の電波の影響でアンテナアナライザーが使用できず、やむなく昔のディップメーターで共振周波数を調整し、インピーダンスのマッチングをとるためアンテナチューナーを使用しています。1KWの運用にも耐える構成です。

 
 
   
10m長のファイバーロッド  7、10MHz帯用バリLを
バナナチップで切り替え
   
   
   
 屋上のバリLとバリコンの下に
800W
ATチューナーCG5000がある

グラウンドに設置した固定局
160mバンド用

自作オールバンドアンテナチューナー
 

   

現在QRPから1KWまでの運用を楽しんでいます。

2010年11月下旬から始まったZL8Xのペディションでは1.8、3.5、7、10MHzまで上記固定アンテナとMARK5のベアフット交信できました。少しでも160mバンドに興味のあるHam仲間のお役に立てれば幸いです。

お空でお会いしましょう。

73&88 

 

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